「自分は愛される価値があるのか?」「どうすれば認められるのか?」多くの人が抱える悩みであり、それはしばしば「受け身の心理」として現れます。受け身な人は、愛されたい、認められたいという気持ちが強く、周囲の目を過剰に気にして行動する傾向があります。これは、幼児期に満たされなかった承認欲求に起因するとされています。
幼い頃に十分な愛情を受けられなかった人は、大人になっても、他人からの承認を求め続ける傾向があります。その結果、自分から行動を起こすことができず、常に他人に依存した不安定な状態に陥ってしまうのです。
このような「受け身の心理」が、私たちの人生にどのような影響を与えるのでしょうか?
受け身とは
受け身とは、愛を求める態度です。これは、自己価値感や自己愛に深く結びついています。特に子供の頃から愛され、十分な愛情を受けて育った人は、自ら愛を求めることなく自然に他者を愛することができます。しかし、愛情を受けることに飢えて育った人は、他者からの愛を強く求める「受け身」の態度を取る傾向があります。
小さな子供は基本的に受け身です。彼らは親からの保護と愛を求め、それに満足します。子供は親に対して何も具体的なものを与えることはできませんが、親はそれでも子供を愛し、世話をするのです。この能動的な愛を与える親の姿勢が、子供に安心感と自己価値感を与え、子供が自信を持つ基盤となります。
しかし、受け身で神経症的な親は、子供が自分の自尊心を回復させるための手段としてのみ満足感を得ることがあります。このような親のもとで育つ子供は、常に他者からの愛や承認を求め続けることになります。結果として、自己無価値感が強まり、受け身の態度から抜け出せなくなるのです。
一方で、愛された経験を持つ子供は、愛する能力を身につけた大人へと成長します。彼らは自己価値感を持ち、他者からの愛や承認を必要とせず、自らが他者に愛を与えることができるのです。このような人々は、堂々としており、安定した人間関係を築くことができます。
受け身の態度は、愛情飢餓と自己無価値感の象徴です。愛される経験が少ないと、他者からの愛を求め続ける受け身の態度が強くなります。逆に、愛されて育った人は、愛を与えることができる大人へと成長し、自信を持って生きることができるのです。愛の重要性とその影響力を理解することは、自己価値感の向上と健全な人間関係の構築に繋がります。
受け身の特徴
受け身の人間は他人に見られること、評価されることを重視し、他人の期待に応えるために努力します。しかし、これは自己を売り込むための行為であり、他人から愛されるためのものです。
一方、能動的な人間は他人を愛することを人生の喜びとし、自己の目標に向かって積極的に行動します。また、他人からよく思われることを必要とする人は、他人の期待に応えるために自己を見失い、自己の願望を捨ててしまいます。これらの人々は、他人からの好意を受けることが負担となり、自己の存在を否定する傾向があります。このような心理状態は、敵意の抑圧や自己の侮辱によって引き起こされると考えられます。
受け身の原因
依存心
依存心は他者に頼りたいという欲求から生じるものであり、これは劣等感と密接に関係しています。John Bowlbyの研究によれば、過剰依存を示す少年たちは統制群と比べて劣等感を感じる傾向が強く、その結果として異常な恐怖も抱きやすいことが示されています。また、これらの少年たちは家庭内での親の拒否に直面しており、その結果として自己評価が低く、自信を持てなくなることが多いです。
カレン・ホーナイも、劣等感の原因としての所属感の欠如を指摘していますが、これも基本的には同じことを述べています。依存心こそが劣等感の原因であり、特に家庭内での親の拒否が大きな影響を及ぼします。子供は親からの拒否を自分の価値が低いからだと解釈し、それが劣等感と依存心を強めるのです。
依存心は幼児的願望とも関連しており、これは何かをしてもらいたいという受け身の願望です。世話をしてもらいたい、守ってもらいたい、話を聞いてもらいたい、甘えたい、触れてもらいたいなど、相手に何かをしてもらいたいという願望が幼児的願望であり、これが満たされることで人は能動的になれるのです。
しかし、幼児期にこの願望が満たされなかった場合、成長しても能動的になることが難しく、うつ病などの精神的な問題を引き起こすことがあります。母親からの無条件の愛が重要であり、それが満たされることで人は安心して何かをしてもらえる心理状態になるのです。母親に愛されているという経験は受け身の経験であり、そこには愛されるために自分がしなければならないことは何一つありません。自分がしなければならないことは「彼女の子どもであること」に尽きるのであり、母親の愛は無条件であるのです。
このように、受け身の態度は依存心から生じ、劣等感とも深く結びついています。そして、それらは成長過程での人間関係や家庭環境に起因するものです。
抑圧
受け身の態度は、他人の望みを優先することから生じます。周囲の人間の望みを嗅ぎ分ける達人になる一方で、自分の望みが分からなくなります。自己抑圧が進み、対人関係で自分を抑圧するうちに、自分でも自分がどう感じているのか分からなくなります。受け身の人は、他人の反応を自分の人格と考え、自己の他者化が進みます。
抑圧された感情と自己否認は受け身の態度を強化し、人々を現実から逃避させます。自分にウソをついている人は、活動的に見えても実際には受け身で、現実を認めることを避けています。しかし、認めざるを得ない事実を受け入れることで、人々は初めて能動的な態度を取ることができます。受け身の人は妬みや嫉妬に囚われやすく、自分に失望している人は他人を非難しやすいです。現実を否認し続けると、不必要なストレスが体に溜まりますが、事実を認めることで初めてリラックスできるようになります。
受け身の影響
自己卑下と他人への不信
受け身の姿勢を取ることは、自分を守るための戦略の一つであるかもしれませんが、それが長期的に見ると自己卑下につながることが多いのです。これは、自己信頼の欠如が原因であると言えます。
他人を信頼できないということは、自分自身を信頼できていないことと同義です。自分への信頼と他人への信頼は実は同時に起こります。相手を信用できないということは、自己卑下でもあるのです。自分を信頼する人は、自信を持って相手に近づけます。自分を信頼できない人は、自分の価値や能力を低く見積もりがちです。その結果、他人からの拒否や否定を過度に恐れるようになります。この恐怖が、受け身の姿勢を強化するのです。拒否されることで傷つくことを避けようとするあまり、行動を控え、迎合やお世辞といった表面的な手段で他人との関係を保とうとするようになります。
このような受け身の姿勢は、自分自身の心の力を弱めるだけでなく、人間関係においても消極的な影響を及ぼします。自分の中に力を感じることができる人は、他人を恐れず、自信を持って行動できます。逆に、自分を信頼できない人は他人を信頼することも難しく、常に相手の心が変わることを恐れています。
相手の好意を信頼できないため、相手がどんなに自分を信頼してくれていても、その心がいつ変わるかわからないという不安がつきまといます。この不安が、さらに自己卑下の感情を強化し、自己信頼の欠如を深めるのです。こうした負のスパイラルに陥ることで、人間関係がより一層困難になるだけでなく、自分自身の精神的な健康にも悪影響を及ぼします。
自信が持てない
自信とは、自分の能力を信じること。しかし、その自信はどこから来るのでしょうか。心理学者セリグマンによれば、それは「自分の能力で不満を解決する」ことから来ると言います。日常生活の中で、私たちはさまざまな不満に直面します。小さな欲求から、「この困難を乗り越えたい」という大きな課題まで、さまざまです。しかし、その不満を解決するためには、自分自身で行動を起こすことが必要です。受け身の人は、自分で問題を解決する代わりに、他人に解決してもらうことを選びがちです。しかし、その結果、自分自身の能力を信じる自信を得ることができません。受け身の人が自信を持てないのは、彼らの生きる姿勢によるものです。一人では生きられないという心理的自立性の欠如が、自信を持つことを阻んでいます。
受け身の人は、自信が持てず、環境に不満を持ち続けます。自分の意思を伝えることで自信が生まれますが、他人に依存すると無気力が植え付けられます。受け身の人は、自分の甘えを満たしてくれない周囲に不満を感じます。
受け身の態度は、自分の感じ方を抑圧することで強化されます。自分にウソをついている人は、受け身の表現を使いがちであり、活動的に見えても内心は受け身の態度を持っています。現実を認めることで初めて能動的になれます。
悩み多き人生になる
受け身の人は、他者からの愛や評価を強く求める傾向があります。この依存心が、人生におけるさまざまな悩みの原因となります。例えば、親子関係や恋愛、職場の人間関係など、他者が自分を思うように扱ってくれないことに不満を抱きます。このような状況において、愛の問題は「愛されること」に集中し、「愛すること」は二の次になりがちです。
依存心が強いと、相手が自分の期待に応えてくれないときに敵意や恨みが生じます。これは依存心が支配欲に繋がり、その結果、相手をコントロールしようとする欲求が生まれるからです。依存心を持つ人は、自分が思うように動いてくれない他人に対して不満を募らせます。つまり、悩みの根本にはこの依存心があり、それが人生の重荷を増大させているのです。
悩みを解決するためには、まずは自分がいかに依存心が強いかに気づくことが重要です。愛されることを求めるのではなく、愛することを意識してみると、自分の中の依存心に気づくことができ、他人に対する過度な期待や敵意を軽減することができます。さらに、自分自身を理解することが大切です。自分が何者であるかを理解し、自分の価値観や目標を明確にすることで、依存心から脱却しやすくなります。
受け身の姿勢を続けると、日常の小さな困難も大きなストレスに感じられます。受け身でいることで、自らのストレスを増大させ、物事をより困難に感じるようになります。この「悩みは自分でつくる」という考え方は、受け身の姿勢が物事を困難にしてしまうという意味です。逆に、積極的な姿勢を取ることで、ストレスに強くなり、逆境にも立ち向かえるようになります。受け身の人は、心の底にある憎しみや不満を解消し、自己理解を深めることで、悩み多き人生から解放される第一歩を踏み出すことができます。
被害者意識を持ちやすい
エーリッヒ・フロムによれば、人々の幸せは受容的構えか生産的構えかによって決まるとされています。受容的構えの人は常に愛を求め、得られないと不満や憎しみを抱きます。
また、被害者意識を持ちやすく、人間関係を間違えやすい傾向があります。一方、生産的構えの人は人間関係を間違えず、自分の周りに非生産的な人々を集めないため、結果的に幸せになります。
このように、受け身の人は被害者意識を持ちやすく、その結果として他人との関係で常に不満を抱えやすいです。生産的構えの人とは対照的に、受容的構えの人は自分の周りに非生産的な関係を築いてしまい、ますます不幸を招くことになります。これらの概念は、人々が自分自身と他人との関係をどのように築くか、そしてそれがどのように自分の幸せに影響を与えるかを理解するのに役立ちます。
妬み
妬み深い人々は、愛されたいという受け身の願望が強く、競争意識や嫉妬心が強いです。彼らは自分の価値を他人の態度に依存させ、自分の弱さを感じます。彼らは自分の価値が他人より優れていると思い込み、他人の成功を妬みます。しかし、真の恋愛を実現するためには、この心理的習慣を打破することが必要です。自分の能力を活かすことで、自分の人生を大切に生きることが重要です。妬み深い人々は、自分の挫折を受け入れられず、他人を妬んでばかりいるため、自分の能力を活かすことなく人生を終えてしまいます。自分のできることを始めることで、人生は楽しくなり、心理的成長も可能になります。このような視点から、妬み深さを克服し、自己実現への道を進むことが重要です。
受け身の克服
愛する姿勢
人間関係において、「私はあなたを大切にしたい」という能動的な姿勢が重要であり、それには自己中心的な思考が含まれていません。また、人に頼るのをやめ、人を責めるのをやめることで、相手の思いやりや愛情を理解し、自分自身の無意識の部分や受け身の姿勢に気づくことができます。これらは、自己実現と心の安定につながる重要な要素です。
積極性
ヴィクトール・フランクルの考えによりますと、人は困難な状況でも生き抜く力を見つけることができ、それは生きる意味を見つけることから来ます。受け身で生きる人は苦しみに耐えられません。積極的に生きることで強くなります。生きるということは挑戦的なものです。自分を否定する人の視点で自分を見るのではなく、自分を肯定する人の視点で自分を見ることが大切です。自分は素晴らしい人生を送るに値する人間であると心に決めることが重要です。
悩みから抜け出すためには、「私がこの環境を選んだ」と自分に言い聞かせ、能動的になることが必要です。毎日自分の考え方をチェックし、感謝の心を忘れずに生きることが大切です。人は受け身であることをやめ、自分を磨くことを忘れないようにしなければなりません。これらのことを心に留めて、自分自身を肯定し、積極的に生きることで、人生はエキサイティングになります。自分は素晴らしい人生を送るに値する人間であるということを忘れないでください。